(無題) 『記録映画 不安な質問』上映用チラシ 9月 たまごの会映画委員会 <1979年(昭54)>
 (無題) 『記録映画 不安な質問』上映用チラシ 9月 たまごの会映画委員会

 現実の生活者松川八洲雄氏が快食漢であるかどうかは知りません。だが、この映画の作者としては食の美学者、食の快楽者としての哲学をベースにしている-その上層に、生活意識の変革のドラマが建築的に組み立てられている気がします。日常、私をとりまく商品として投げあたえられているマス的流通体系としてのたべものと彼ら「たまごの会」の人々のそれとのちがいーつまり、食の感性の根源をこれだけ洗い出し、再生への喚起力をうながすには、松川氏らもその一分身である「たまごの会」の五年間に賭けた挑戦性あってのことでしょう。
 都市の生ゴミ風の残飯が、大鍋で豚の栄養食品にかえられるシーンや、そのし尿とわらの堆肥からたちのぼる湯気が、生命系のぬくもりを象徴して美しさに至っていました。原野、くわもつジーパン婦人、とり小屋での結婚式、豚の首料理…豊饒なわいざつさを孕んでの集団の成長につづられたこの人間叙事劇は、鋭い思想的作業力と、おびただしい思索をひめながら、瓢々たる映画にみのりました。改めて喝采を送らずにはいられません。