映画『プロフェシー』の製作者・配給社への公開質問状を出すにあたって  <1980年(昭55)>
 映画『プロフェシー』の製作者・配給社への公開質問状を出すにあたって

 私たちは映画『プロフェシー』の公開にさきだって試写を見る機会を得、その内容につよい批判と疑問を抱くものです。この映画の背景が有機水銀汚染問題であり、主な登場人物が胎児性水俣病と思われる、ある生きもの(怪獣)として描かれていることから、この映画が水俣病のイメージに極めて有害であり、製作者の意図と責任を問わずにいられないことを残念に思います。ここにこの映画を見た、水俣病運動にかゝわりのある個人・団体の名において、質問いたします。

公  開  質  問  状

(1)この映画はプレスシートに冒頭のべられているように 「文明の名において自然を破壊し進歩の美名のもとに環境汚染をひろげていく人たちに対し、怖るべき『予言』を宣する作品」として意図されたものか、いわゆる怪獣映画として意図されたものかお答えねがいたい。
(2)もし社会的な映画であるならば、水俣病像についての理解、そしてこのストーリーのモデルと思われるカナダ・インディアン居留地に発生したミナマタ病とその事件の経過についてどう理解されているのか要約的に御答え下さい。
(3)この映画がもし、モンスター映画の一タイプとして創作されたのであれば、何故「一九五六年日本ミナマタで発見された有機水銀汚染の事実」を劇にとり入れる必要があったか、さらに医学的事実すらゆがめてまで胎児性水俣病の怪獣をつくり上げる必要があったのですか。
(4)この映画の”良心的″医師の口をかりて、水俣病像を説明しつつ怪獣の発生をのべるなかで「有機水銀は遺伝子に影響し、突然変異をおこさせ、発生過程の胎児におそろしい奇型をうませる」と断定していますが、これはいかなる医学的研究を根拠にしているのですか。
(5)また映画のモデルになっているカナダ・インディアン居留地の水俣病にせよ、日本の水俣病にせよ実在の企業が有機水銀をたれ流したことは厳然たる事実であり、それにより企業と国の責任が問われているのですが、この映画では有機水銀が下請の貯木業者によって勝手につかわれていたとする、つまり企業に対する責任免除の設定はどうして作られたのでしょうか。
(6)私たちが最もこの映画のフィクションに怒りを覚えるのは、インディアンもしくはある”生きもの”の胎児そのものを人間に有害な危険なモンスターとされたことです。この設定のどこに人類への警告があるのでしょう。映画ではモンスターを敵とする医師・企業・インディアンともどものたたかいとして描かれ、すべての社会的事実はふきとんでいますが、映画にうたわれたその警告性、社会性はどうなっているのですか。
(7)水俣病は現代文明のたゞなかからの公害であり、現実に世界各地で進行している疾病であることは周知のことです。しかし、それに対する社会的弾劾はこの映画のどこにも見出ぜません。製作者として御教示ください。それとは反対に、水俣病像を奇怪な胎児性のモンスターにし、広く世界の水俣病を知らない観客に誤ったイメージを与えたこと、また水俣病患者を差別していることについて、どう責任をとられますか。
(8)現在水銀汚染地は世界各地におよび、出産や妊娠すら怖れる女性が数万人に及びます。この映画が、インディアンの現汚染地や日本の水俣などで胎児性水俣病はじめ全患者への道義的責任をどのように考えられているのでしょうか。
(9)胎児性的モンスターが登場しますが、続第を作られる意図がおありか

 私たちは右質問に批判をこめており、、非科学的で非社会的な怪獣映画に、水俣病がつかわれたこと、ことに胎児を見せものにすることに強いいきどおりを感じ、その公開を有害と考えるものです。今後もし、被害者がいかなる抗議行動をとるとしても、最も強く支持し、行動をともにするつもりであることを記しておきます。
 たいし、これへの回答は責任をもって公開する義務を負うことも、あわせ付記し、ここに質問状を呈出するものです。
 一九八〇年一月二八日