『医学としての水俣病』、日本・世界配給へ ユニ通信 1月9日 展望台 ユニ通信社
昭和48年7月(1973年)からクランク・インした「『医学としての水俣病』のうち「第一部、資料、証言篇」(1時間19分)「第二部病理病像篇』(1時間49分)が10月に完成、ついで「第三部 臨床・疫学篇」が今年2月末に完成の予定である。
この映画は補償制度やその病気の審査に当っての認定基準の非公開の原則ともからまって、水俣病の医学は一般には広くしられていない。
とくに、20年前の発生当時は、有機水銀中毒の急性発症例の典型形があまりに残酷強烈なため、水俣病の病像は、その典型に照合することが多かった。
その後水俣病はかつての発生期の発症の“後遺症”として十年位の間、あと始末の様に扱われてきたが、医学は今日、微妙に発症してくる水俣病について、全く新しい病像観に転換してゆかざると得なくなった。ここに、この映画が水俣病の発生の歴史から、ひいては、今日の慢性発症例まで、もう一度一望のうちに鳥瞰し、水俣病を長期にわたって、その汚染地域に続発させる可能性のあることを再認識するための資料性と科学性を表現するものとなった。
第一部は、水俣病が奇病とされていたから、有機水銀中毒の証明にたどりつくまでの、疫学者、臨床研究者、病理学者、保険所長などの社会的な圧力のなかで探求の足どりが克明につづられ、“社会の病い”としての水俣病の発見が“公害”ゆえに一筋縄の研究ではすまなかったことを物語っており、水俣病の歴史をえがきながら一面、社会の病理の焦点としての水俣病をもあわせのべている点、単なる学術映画ではなく、医学のドキュメンタリーともなっている。
第二部は、典型的な水俣病の教科書的病例、解剖に見る特異な症状をのべたのち、医学常識の変革を余儀なくされるような非典型例の病理を次々に展開している。
胎児性水俣病のメカニズムや有機水銀がなぜことさら選んで脳の中枢や視覚を犯すかが、世界的にも最も進んだ動物実験で次々に紹介される。とくに水俣病は神経学の専門分野とみなされているが、この「病理・病像篇」ではもともと全身、つまり消化器・泌尿器・心臓・血管などの全体がやられ、特異的には神経にあらわれるものであることを平易に証明しようとしている。
第三部(予定1時間30分)はフィールドでの実践面であり、水俣病の患者の症状のどこから発見・判断するかについて示唆にとむものとなろう。
この映画は全篇医学者のそれどれの研究発表の形で映像素材を充分につかって構成されており、演出(土本典昭)の作為は全くみられない。日本の医学者の協力で完成した。4時間40分の三部作の記録は、全国の医学会、・医学大学・各県の公害課及び全都道府県のフィルムグラフィにプリントとして購入され、広く必要な人々に自由に公開されることを願っている。なお英語版も作成中で、すでに第二の水俣病発生国イラクで上映されたのをはじめこの1月20日には、国連WHOの理事会で公害に関心のある理事国代表に公開される予定である。
スタッフ 製作 高木隆太郎、演出 土本典昭 撮影 大津幸四郎 録音 浅沼幸一
問い合わせ先 東京都港区西新宿 20-8-13 第一東京ビル 青林舎