思いつめた「水俣病」 『毎日新聞』 3月6日 毎日新聞社 <1985年(昭60)>
 思いつめた「水俣病」

 ベルリン映画祭の帰途、パリに立ち寄った記録映画作家、土本典昭さん(56)がシャイヨー宮でこのほど開かれたシネマテークで講演した。水俣病の長編記録映画をカナダで自主上映するなど、フィルム行脚で国際的に有名な土本さんは「水俣病はあまりに重いテーマだったので、映画をやめようとまで思いつめた」と告白。「社会から疎外された人々、自分で発言する力をもたない人々の中に、とり上げなければならない、現代のテーマが潜んでいる」と熱っぽくかたり「来年は水俣病が発生してから30年にあたるが、新しい記録映画をつくります」と締めくくった。(パリ 松本特派員)