日本・アフガニスタン合作記録映画 1988,5,4 『眠れる泉 <カレーズ>の復活』(仮題)(副題…アフガニスタン・その遺産と和解…)
1時間50分・カラー・日本・各国語版
[題名の意味…アフガニスタンの土地に命を与え続けた地下の泉 <カレーズ>は都市にも、暮らしにも人々の心にも流れ続けている。映画はその流れを表現したい…]
この映画は1988年 4月14日のジュネーブに於けるアフガニスタン問題和平合意の歴史的調印を期に、日本・アフガニスタン両国の合作記録映画として製作されるものである。
その映画についてのプロトコールの趣旨と意図に添って、日本側の撮影希望項目をリスト・アップします。アフガニスタン側との製作協議の為のものですので御検討ください。
1)今日的政治状況の記録ー1 (政治的・季節的イべント)
*新憲法のもとでの第一回国会開会式。ナジブラ大統領の挨拶および各党代表挨拶
*その前後の記念の催し、祝賀、大衆集会およびカブール市民の表情と意見。
*5,15ソ連軍の撤退の実況とそれに関する記念行事。ソ連軍兵士の顔と声、およびアフガニスタンのひとびとの顔と声。
*他のソ連軍の撤退にむけての動き、アフガニスタン政府軍との交替と交流。
*TVの特別番組放送風景、それを見る市民たち
*アフガニスタン・ソ連両国の国境アム河の“友好の橋”を渡り帰路につくソ連軍の一部隊の隊列に同行して橋を渡るカメラ。(歴史的に友好を保ってきた景観として)
*不測のテロ行為があればその実状の記録。
*5,16ラマダン(断食月)明けの明るい市民のお祝い風景。新時代の幕開けとしてカブールの至る所での人々の表情。
*イスラム寺院におけるラマダン明けの大礼拝。
2)今日的政治状況の記録ー2 (国民和解の進捗の現実)
*帰還難民とその受け入れ。
ニュース的なバライェティーに富むスナップのほか、終章(7)一つのシーンとしてまとめる。
*ジュネーブ合意にもとずく国連停戦監視団の活動の開始状況とアッピール。
*国民和解委員会、その中央レベルと地方レベルの活動
*説得班の具体的な村や町での活動。危険も伴う最も献身的な働きとして。
「国民和解政府」地方、村々単位の宣伝、教育説得活動。
*武装している反政府勢力との和解工作。そのテリトリーでの和解成立の過程。
一定の時間をおいて、その地域での和解条件にそった連合の自治的行政の在り方をフォローし、独立したシーンとしたい。
*激動の一時期を経て、ナジブラ大統領の民族和解についての単独インタビュー。
3)アフガニスタンの歴史的遺産の現実(カブール博物館にて)
(シルク・ロードの遺跡は異教徒による破壊の歴史を物語る。発掘と保存はアフガニスタンの独立から始まった)
*カブール博物館に守られている紀元前3000年からの文物のパノラミックな紹介。
ギリシャ・ローマ、インド仏教美術、ヒンドゥー美術、イスラム文化の全貌。
*内戦によりいまだ展示されていない最近の出土品の保管の状態。博物館の地下室
*アフガニスタン考古学者へのインタビュー。いかに遺物を守ったかについて。
アフガニスタンの歴史的遺跡の現実(戦禍からいかに影響を受けたか、守ったか)
*シバルガン、バーミアン、ハッダ、ベグラム、ガズニ、ヘラート等各地の遺跡。現在の保存状況を各遺跡ごとに条件の許す限り歴訪したい。
4)アフガニスタンのこれからの生活の出発点。(都市の現実)…「泉はどこに?」の視点で「町の中のカレーズ」を求めて…。
近代化の進んだカブールの最新の生活の紹介と今後への課題
*貧困、飢え、病気、無知、失業、最底辺階層の生活からの解放の過程、成果は何かを、ある婦人の自由な選択で紹介してもらいたい。旧いもの新しいもの全てをその婦人の 10,20年の体験と重ねて、縦横に。(例えばカブール大学女子大生の案内で)
*「識字運動」「ワタン・ナーサリー(孤児院)」「内戦による未亡人の組織運動」などを含める。
人口膨脹を極めているカブールの経済の基盤を支えてきたもの。
バザール、食糧工場、住宅建設、エネルギー、交通通信機関、そして治安・警察の在りようまで。市民の生活を支えている仕事とその労働現場と労働者。
以上を例えば、青年公務員の現場感覚でカメラにむけて叩きつけるように。
*民族和解に応じて新たに位置についた“国教”イスラム教の指導者のみる、カブールの今日について、“和解”について、市民の生活のイスラム的規範について。
*ケシュトマンド首相へのインタビュー(数字に明るい)
・難民とくに農民の帰還に当たって、当面する課題…農地の公約に添った配分をどう解決するか。帰国条件の整備の問題点を質問したい。
・過去の大きな経済文化プロジェクトの“遺産”。とりわけ外国の経済援助のもたらしたものの意味、在りようを率直に聞きたい。
・同時に今後この国はどこの国にどんなプロジェクトを求めてきたか。さらに今後の復興のために切実に何を必要とし、どのような援助を期待するか(日本をふくむ経済大国、超大国にむけて)「新たな“カレーズ”を求めるとしたら…」
5)パキスタンのアフガニスタン人の記録。(パキスタン・ロケーション)
*難民キャンプ(部族社会単位)の世界・その帰国の意思の在りようと、反政府勢力の指導者の和解政策への意見と行動。「どのような憲法、政権を掲げるのか」
*同じパシュトゥーン族出身のパキスタン・アワミ党党首ワリ・ハーン氏のインタビュー。
6)あるアフガニスタンの一農村の現実とこれからの出発点。
*現実の村のカレーズを巡って、そこから土地・畑の在りようを一農民、一実力者、一部族社会の一単位の関係まで、この水の問題を軸に辿ることから始めたい。
ここでは基礎的調査をかね長時間取材の条件を得られるか否かに係る。
・農村女性の生活、その内戦(難民)体験、どのような暮らしを望んでいるか。
・「戦争より怖かったもの」が過去の暮らしになかったか。
・四月革命の体験はどのように受けとられているか。
・部族社会を律しているイスラム長老の生活と意見。
・遊牧民の放牧生活。村人との関係はどうか。商業、運輸、または「ゲリラ」…
・ある農民家族の三代の歴史のインタビューと記録的再現。(第三次対英国独立戦争、王政時代、現在への 100年のあいだ全然変わらないものがあるか)
・今日の土地、水、作物、来る冬への用意、結婚、葬式、祝いごと、祭等。
7)難民、村へ帰る。前記の村、または近村であること(同じ行政単位)そして“枯れたカレーズ”を掘り返す課題を持っている村を条件としたい。
・そこでの難民の再定着の過程を克明に。部族社会がどう生きるか。
・家、土地の荒廃の再建等、村の再生活動の中心にカレーズの復興の集団労働があれば、そのプロセスをぜひ見つめたい。種子やつなぎの生活資金、「村の政治」の再生…だが農村ではカレーズが甦るかどうかでき決まるという。これが「村の和解政策のワン・サイクル」として主題の中心軸となりうるだろう。
以上は撮影の具体的項目と希望項目であり構成の順序ではありません。アフガニスタンの合作映画責任者との打ち合わせのためのテキストです。構成は撮影できたものによってあらためて創造的に決定していきたいと思います。