人間ひろば「民衆の生活に焦点」 配信 8月27日脱稿 共同通信社
ソ連軍の本格撤兵開始に合わせてアフガニスタン入り。報道もあまりないナジブラ政権側の兵士や民衆、現地の様子など、ドキュメンタリー映画を撮ってきたそうですが。
「撤兵開始が五月十五日からなので同月九日に首都カブールへ入り、六月末まで現地にいました。政府系の映画社というのか、アフガニスタン・フィルムというところと共同製作です。そうでなければ撮影できませんからね。ソ連軍がまず撤退を始めたジャララバードからカブール高原までの国道、ここは激戦地だったし、撤退時にも反政府側からのロケット攻撃があるとされていた所です。この道をソ連国境へ向かうソ連軍戦車などの列や周囲の様子を、フィルムに収めました。カメラマンと二人でソ連戦車にも乗ったし、特別許可をもらってソ連領に入り、そこで帰還兵士を待ち受ける民衆も取材しました」
∇現地民衆は日本人びいき
「ソ連兵の表情は、戦争は終わったと帰り待ちの顏でした。もう戦わないと思います。若い兵士が多いですね。アジア系の二十代が多く、とても精鋭部隊とは思えなかった。熊谷博子さんという、テレビのドキュメンタリー演出ではトップクラスの女性が、共同監督で同行してくれたりしたので、男では不可能なアフガン女性の生活も撮影できました」
「ガンダーラ美術などで有名なヘッダ遺跡という所も、戦火を受けたが、美術品などはその前にカブール博物館に移されたことが、初めて確認できました。今回が第一期の撮影で、第二期は九月初めから今度はパキスタンのアフガン難民や反政府勢力側などに入ります。反政府側の指導者二、三人と接触中です。とにかく、現地の民衆は日本人びいきで、案内してくれたり、あるかじ屋さんは作ったツルハシをくれたり…」
ーアフガンには前から関心が? 映画はいつごろ完成しますか。
「一九七三年、王制を倒す革命があったが、それは兵士たちが銃口にカーネーションを差してやった平和革命。面白いと思いましたね。イスラムの国でありながらミニスカートがいたり…。アフガンを知る会、今の友好協会で勉強したりしてました。だから七九年のソ連侵攻、カルマル政権誕生で、米ソ対立の中で同族殺しが始まると心配もした」
∇水俣をまた撮りたい
「完成は来春。二時間ぐらいで、題名は”眠れる泉(セレーズ)の復活”にする予定です。セレーズというのは地下の農業用水のことで、砂漠、乾燥の国であるアフガン農民の多くはこれに頼っている。大事にしていたのに、戦いで荒廃してしまった。これをどうするのか、民衆の生治は今後どうなるのか-ということで題にしようと思っているんです」
-水俣シリーズなど終始厳しい社会派の記録映画にこだわっておられますが、今後もフィクションものには興味ないですか。
「ドキュメントが性に合ってるんですね。手法も千差万別。やっているうちに面白いもの、新しいものの発見が出てくる。特にとことん掘り下げていくと、人間の面白い面が出てくる。例えば水俣病の人たちなどは大変明るい。こちらのセンチなアプローチなど突き放される。人は痛めつけられるとバネができるんですね」
「これからですか、既に十五本ある水俣をまたやりたい。それから原発間題として”ウランの一生”といったものを考えてます。据り出しから廃棄まで、各所を汚染し、兵器になり-その危険な旅で人間の愚行史みたいなものを作りたい」(聞き手、片岡清共同通信編集員)