くりかえしてはならない共通の体験になるまでー人びとにとって引き受けなければならない世界『水俣の甘夏』『水俣病-その30年-』を語る。即位の礼記録フィルム(講演録) 『くりっぷ』 N0.15 3月16日号 杉並記録映画をみる会 <1991年(平3)>
 くりかえしてはならない共通の体験になるまでー人びとにとって引き受けなければならない世界『水俣の甘夏』『水俣病-その30年-』を語る。即位の礼記録フィルム(講演録) 『くりっぷ』 N0.15 3月16日号 杉並記録映画をみる会

 1990年11月12日午後0時より3時まで -即位の礼当日の記録フィルムの上映―

 土本氏
 
 今日は入口に貼り出しておいたんですけれども、実は即位の日の記録フィルムを見て頂きたいと思うんです。これは撮りっぱなしで、未編集フィルムに現実音だけついているものです。
 僕はこれをオランダのアムステルダムで発表しました。そこで世界のドキュメンタリーの映画祭がありまして、そこに飛び入りで出したんです。招待作品としては「水俣-患者さんとその世界」が上映されました。
一月にはロッテルダム映画祭があり、二月にはベルリン映画祭があり、その後もいろんな映画祭がドキュメンタリーもふくめてありますので、私はビデオを参考上映のためにおいてまいりまして、フィルムは今日のために持って帰りました。
 これは東京の出来事なので、ほとんど説明はいらないと思います。ちょっと説明しますと、その十一月十二日、即位式当日の宮城の時間を思い出してほしいんです。僕たちは十二時五分前に現場に到着しました。そして一時の即位式の時には、宮城へ出入りするの車などの動きがなくなりましたので、厳戒警備の体制を撮影しました。そして二時頃に銀座を撮影しました。最後に祝賀パレードのコース、赤坂に行きまして 赤坂見付のわりと下の方で撮りました。

 三つ誤報がラジオを通じて私の耳に届いたんです。私は普通のラジオ二台で実況放送を聴き取っていました。天皇の三時からのパレードは二重橋正門かちではなく半蔵門から出るという説です。これは僕は撮るつもりはなかったのであわてませんでしたけれども、ちょっと重大な誤報だったんです。

 やはりこれは安全と警備に関するテクニックだと思います。
 第二の誤報は、先導のシロバイの後のサイドカーの列の後に天皇の車が来ると、その後に首相の車が続くよと、その後に警視総監はじめあらゆる警備の代表の車が来ると放送していました。ところが順序は現実には逆になりました。サイドカーの次には海部首相が出て、命を張ったような顔で、次に天皇の乗った車がきました。過激派対策のためのへんこうだったのでしょう。

 第三の誤報は、その天皇の車もテレビは撮影設計をひっくりかえされたのです。なぜならば天皇は進行方向へむかって左に乗ると報道されていたんです。それは前から決っていたんです。テレビ局は進行方向に向って左サイドに進む天皇を主役に撮るように、カメラを赤坂見付から青山に向って左側に配置したんです、顔が見れるように。僕たちは偶然のことですけど右側にいっちゃたんです。そしたら現実のパレードの席順は変わっちやたんです。天皇が僕たちのほうに来ちやったんです。マスコミとの協定を破った警備の方針変更だったのでしょうか。 

 これをなぜ撮れたかを疑問があるといけないので言いますと、テレビ局がカメラを放列している隣のポジションで、いままでも水俣病のフィルムを撮ってきたんです。
 これは水俣スタッフなら全部知っていることです。プレスカードはありません。テレビ局がいるところは僕たちが行けるところだと思っているわけです。ですから前日にロケハンしたら、そういうポジションがわかりましたので撮っただけです。スタッフのみなさんごくろうさまでした。ではまた後でスタッフの紹介を致します。
 上映を始めますが時々ちょっと素材だけ言います。音がついておりませんのでいまそちらで操作して現実音をシンクロします。

 撮りっぱなしの未編集フィルムに、現場で録音した音をあてる。高岩仁氏の音と藤本氏の映写の絶妙なタイミングで上映はスタートした。それに土本典昭監督の洒脱な解説がはいる。あの日のできごとが鮮やかによみがえる。客席からの反能はすごぶるよい。宮城まえのボデイチエックに憤り、銀座通りをのんびりと自転車が横切る場面に笑いがこぼれる。夕暮れの赤坂あたり、ずらしと並んだ警備陣と警備車の移動撮影でフィルムは終了する。

 土本
 
 スタッフタイトルがございませんので、タイトルがわりにスタッフを紹介させて頂きます。あそこで音を出して頂いたのは、高岩仁さんと申しまして古い水俣のスタッフです。最近では『浪人街』のカメラマンをなさいました。(拍手)
 こちらは浅沼幸一さんです。僕の古い『ドキュメントー路上』という映画からの録音の方です。(拍手)
 それから藤本幸久君いませんか、いま上で映写をやって頂きました。近く演出になろうと思って非常に勉強している人です。
 それから青木基子さんは時々上映会でご覧になっていると思います。当日はボルボで撮影に行ったんです。それでサーツト通りぬけられて怪しまれなかったわけです。
 撮影中に車の中の機材とフィルムーを全部守ってくれました。(拍手)
 それから『水俣の甘夏』の一之瀬君は『パルチザン前史』の時からの盟友です。さっき出ましたからご承知かと思いますけれどももう一度立って下さい。(柏手)
 このフィルムのキャメラマンは清水良雄君です。僕の作品では『海盗り―下北半島・浜関根』等の代表作があるカメラマンです。
 どうもありがとうございました。