「補完」ではなく「対立した」2館 『朝日新聞』 2月13日付 朝日新聞社 <1993年(平5)>
 「補完」ではなく「対立した」2館 『朝日新聞』 2月13日付 朝日新聞社

 「水俣」を撮り続ける映画監督・土本典昭さんの話

 考証館は、「潮のひく半刻、今夜のおかずにカキを」と、カキうちに行ったおばさんたちの生活が、さびた展示物からしのばれる。舟があり、有機水銀の実物からヘドロまで、私たちの喚起力を促す現物がある。チッソの歴史、水俣市の記録をモノで語らせ、市民と患者の間に被害の差がないことを静かに訴えている。
 一方、資料館は全体に人工的な複製絵画展の観がある。さらに水俣病裁判に引っかかるものは外されている。争点となっている慢性や不全性水俣病は「ない」。
 チッソが犯罪的といわれる「ネコ四〇〇号」実験の結果も、裁判で断罪された見舞金契約第五条も隠された。患者の座り込みの運動も当然のようにカット。市長は「二つ(の資料館)で補完される」と開館のあいさつをされたが、これは「対立した」資料館である。