友にささげるビデオ 『熊本日々新聞』 10月13日付 熊本日々新聞社
水俣病闘争を映像で表現してきた記録映画作家の土本典昭さん(70)が、故川本輝夫さん(元チッソ水俣病患者連盟委員長)にささげて作ったビデオを携えて、十九日からの山形国際ドキュメンタリー映画祭に参加する。
土本さんは、一九七一年の「水俣-患者さんとその世界」をはじめ、「水俣一揆」「不知火海」などのドキュメンタリー映画を撮った。今回の「回想 川本輝夫」は、十二年ぶりに発表した水俣病の作品だ。製作は今年二月、川本さんの死から始まった。友であり、自分の道しるべだった存在のふ報に、二週間何もできないほどのショックを受けた。そして「映画を作らなければ」と思った。
従前のスタッフが集まれないなどの事情もあり、結局映画できなかった。しかし、七〇年代の自作を中心に映像を編集。個人的に8ミリビデオで撮っていた近年の川本さんの姿を加え、四十二分の作品にした。
作品の冒頭はモノクロ、水俣市街の空撮から始まる。カメラの焦点がチッソ工場に絞られていく。家々を回り潜在患者を発掘していく川本さんの姿。チッソを相手に闘った自主交渉。ハーモニカを楽しそうに吹く素顔。そして亡くなる前年の年賀状。「離合集散、脱落、裏切り、中傷、不信の三十年でした」の筆跡に、背負ってきた孤独が浮かび上がる。最後は「水俣病を世界遺産に」という川本さんの肉声で終わる。
「回想」は八月、東京の川本さんをしのぶ集いで公開された。土本さんの頭からは今も、晩年の川本さんの姿が離れない。今も残る未認定患者、胎児性患者の今後。彼が背負っていたものを通して「水俣の今の苦しみ」が見極められるのではないか…。
山形の映画祭に参加するのは「若い仲間に誘われたから」という。「自分に何ができるか」。若い作家とともに、考えたいと思っている。