NEONEO 新年アンケート <2003年(平15)>
NEONEO 新年アンケート

1)「わが一押しのドキュメンタリー」
 韓国のキム・ドンウォン監督の長編『返還日記』( 2003年作品)に深く感動した。分断国家の悲劇によって韓国に30年余投獄され、さらに苦節10年、故郷の“北朝鮮”に帰国する(返還される)までの非転向者たちの10年余を追いかけた記録である。はじめはおそるおそるかれらに接触したキム監督が、北の老人たちの志操の堅さに敬慕を抱き、終章には民族統一への展望をかれらとの関係性の中に見出だしている。北のひとびとへの深い思いが圧倒的、あわせて韓国80年代の民主化運動が生んだ前衛的作家の登場に脱帽した。いまこそその公開強く待ちたい。それにしても日本の全共闘運動はなにを生んだのか?

2)「ドキュメンタリーの現状について」
 現代は、作家にとってはモチーフ(課題)を見附け得る、またとない時代では…と思う。アフガニスタン、イラクへの日本の戦争荷担の今は、何事を描くにせよ、これが大カッコとして存在している。世界の米国主導のグローバリズムに対し、民衆の“戦いのグローバリズム”をいかに描くか問われている時代とみていいだろう。反政治主義にはリキがない。
 去年のフラハティセミナーで“ポリティック”という、日本では疎ましいとされる言葉が、平和へのキーワード、そしてあるプラス評価になっているような映画青年たちに接した。かれらは数10万の反戦デモを実現し、その渦中に生きる市民でもあったのだ。

3)かって小川紳介は作家の条件にその“志”を挙げた。あえて付け加えるなら、胸に抱える“課題”の存否(あるなし)であろう。最近、黒木和雄監督の新作の『父と暮らせば』(原作・井上ひさし)にはそれがあった。傑作である。氏の課題は 戦争に生き残ったものとしてのトラウマである。この作品に氏の記憶との格闘を見た。…『トゥモロー・明日』、そして10年後の『美しい夏 キリシマ』と『父と暮らせば』は氏の青春の“戦争三部作”になった感がある。古希を超えてなお黒木の作家としての貫徹性に改めて脱帽である。